市長交代で議場の様子にも変化がありました。
一つは、いつも1回の質問で終了する自民・公明両会派が再質問を行い、
いつも再質問していた共産党がこれを行わなかったこと。
そして、山中市長の答弁に対し自民・公明議員席からずいぶん「ヤジ」が飛んだことです。
再質問による「突っ込み」もヤジも、コロナ対策についてでした。
市長選挙の際に「コロナの専門家」とアピールしての当選ですし、
なんと言っても喫緊の課題として私も注視してきました。
自民や公明の議員は、市長が選挙中に〈横浜が医療崩壊〉と言って市民の不安を煽ったと批判し、
これに対して市長が「崩壊が起きる可能性があると考えた」とか「通常医療とぎりぎり両立できている」等と弁解していましたが、
どちらの言い分もうなずけません。
選挙があった8月、横浜市ではコロナ陽性で自宅療養中の市民から119番がかかり、2,242件も救急出場しています。
そしてなんと、そのうち34%で搬送できず救急車がカラで帰っているのです。
入院を絞る「神奈川モデル」の基準でさえ即入院すべき(酸素飽和度93%以下)という患者さんまで、この「不取扱」になったケースがあります。
救急隊は必死で搬送先を探したに違いないけれど受け入れてくれる病院がなく、患者さんを自宅に置いて帰らざるを得なかった。
こういう状態に市民が不安を覚えるのは当たり前です。
不安になるのが正常です。
市民が不安になるのは煽られたからだと考える方がおかしい、そう思います。
山中市長は
「崩壊が起きる可能性があると考えた」
「通常医療とぎりぎり両立できている」等と答弁し、
横浜で医療崩壊は無かったとの考えを示しましたが、
入院が必要な市民が病院に運んでさえもらえず、
不安と苦しみの中、自宅での「療養」を強いられる、
これは医療崩壊ではないのでしょうか。
また、通常医療との両立について言えば、今、神奈川県全体が新型コロナ医療提供体制「神奈川モデル」のフェーズ4に入っています。(今年8月半ばころから)
県が示している表にもある通り、
フェーズ3、4は「一部医療の抑制」によって病床を捻出する段階であり、
通常医療が通常通りには行われない事が前提になっており、
横浜市もその状態です。
一般医療を抑制して病床を作り出し、
かつ「軽症者は自宅・宿泊療養」とすることで、
なんとか中等以上は入院させるという入院トリアージを行うのが「神奈川モデル」ですが、
前段で述べたように、その基準で要入院の患者さんさえ運ぶ先がなくて救急車が帰っているのです。
神奈川モデルすら崩れてしまっている状態は医療崩壊ではないのでしょうか。
「通常医療とぎりぎり両立できている」と答弁した山中市長は、
こうした現状をご存知なのでしょうか。
「ぎりぎり両立」は
市長が選挙中に訴えた「医療崩壊」を否定するために官僚たちが用意した言葉ではないか、
その根拠を市長に示しているのか、
神奈川モデルで既に一部医療抑制をしている事実はどう伝えているのか、
などなど疑問でなりません。
市長は、官僚たちが用意した答弁書を鵜呑みにせず、
その根拠を問いただし、
必要なデータや資料を出させた上で自分の頭で答えを導かなければならないはずですが、
それができていない気がします。
就任間もない時期なので、すべての分野でそれをやるのは無理としても、
せめて「専門家」とアピールしたコロナ対策では、
その姿勢がなければおかしいでしょう。
また、「不安を煽った」と市長を批判する自民・公明両党は、
政府のコロナ対策への厳しい批判が横浜市長選挙敗北の大きな要因であることを直視できずに、
市長選の戦術で負けたと思いたいのかもしれませんが、
それは違うと思います。
新型コロナ医療提供体制「神奈川モデル」