井上さくら の トキタマ日記

横浜市会議員 井上さくら のブログです

横浜の町にころがっている「強制避難区域」ー0.59という市の基準がおおい隠すもの

道路の端にちょっとした砂や泥が溜まっているところ、よくありますよね。
ある方が、その上で空間線量を測ったら、0.4マイクロシーベルト/時と出たそうです。
横浜市が計測や除去の基準としている0.59よりは低いけれども、市が公表している大気中の放射線量0.03よりは随分高いと言う事で、自主的に土壌検査をされたところ、何とセシウムの合計値で5万ベクレル/kgが出たと言うのです。

これがその場所。
ありふれた感じですね。
こんなところに5万ベクレル/kgの放射性物質が・・・・

といっても、正直、ピンと来ません。
そこで、この値がどの程度のモノなのか、調べてみました。

これは、今年の8月30日に文部科学省が公表した「放射性セシウムの土壌濃度マップ」です。(セシウム137のマップ

地図上の点はセシウム137の濃度 (ベクレル/m2)に応じて色分けされています。

横浜の電信柱の下にあった土砂の汚染度を、このマップと比較できるようセシウム137(5万ベクレルの約半分)について、マップの単位 /m2 に換算します。
計算方法は、先の計算でもお世話になった武田邦彦教授のブログを参考に 33倍します。
2.5万×33=82.5万ベクレル/m2 となります。
これは、上の表 600K〜1000K (60万〜100万)の黄緑色にあたります。

もう一度、上のマップを見て下さい。
黄緑色の点がついているのはピンク色の線の中(計画的避難区域)か、福島第一原発から20キロ圏内(強制避難区域)です。
チェルノブイリ原発事故で汚染されてしまったウクライナでは、55.5万ベクレル/m2 が「移住義務ゾーン」ですから、これにもそっくり入ってしまいます。

横浜の日常の片隅に、チェルノブイリ福島第一原発近くで立ち入り禁止になっている土地と同じ状態の土がころがっているのです。
さすがに私もゾッとしました。
本当に大変なことが起きてしまっています。


でも、冒頭に書いた通り、空間線量では、今横浜市が基準としている0.59マイクロシーベルト/時には届きません。
なぜなのでしょう?

専門的な事なので、放射性物質の検査会社の方に伺ってきました。
あわせて、土壌検査も依頼。あえて、外での空間線量0.59に満たない地点をいくつかセレクト。

これは、取ってきた土を袋の上から「シンチレーション」で測定しているところ。
土壌に含まれるベクレルは別の検査装置で測りますが、その場でモニターに核種別の線量が表示されます。

グラフに特徴的な山が現れました。セシウムの検出は確実なようです。

この検査については結果が出しだい、またご報告するとして・・・・

線量と土壌汚染との関係です。
放射線放射性同位体という【点】から四方八方360度周囲に出されています。
その線がどれくらいぶつかってくるかが「空間線量」。
ですから【点】が1つであれば、そこから離れれば離れるほど、線の密度は劇的に下がります。(距離の二乗に反比例)

一方、福島第一原発周辺のように、環境全体に放射性物質がバラまかれ【面】が放射線源になっている状態では、周辺全体から影響を受けるので距離による低減が少ない。だから空間線量ももの凄く高くなる。

なるほど。
横浜など関東では、降下した放射性物質の総量は福島ほどではないけれど、雨や風や人間の働きによってそれが移動し極端に偏在しているため、局所的な高濃度汚染ができてしまっている、と。
これが、最近横浜の小学校や道路の側溝などで「発見」されている【マイクロスポット】ですね。

さらに、こういう【マイクロスポット】は環境中の偏りが大きいため、普通に地上1メートルとかで空間線量を測っても把握できない、という事が理解できました。

では【マイクロスポット】があっても、人体への影響である空間線量が低いなら良いのでは?
という気が、一瞬しませんか。

ところが、被ばくにはこの空間線量による外部被ばくと、飲食や吸入による内部被ばくの2つがあり、体内に蓄積して長期間、放射線の影響を受ける内部ひばくは、より注意が必要です。
しかも、一部が排泄などで体外へ出される飲食での取り込みと違い、呼吸器からの吸入でもし肺に付着してしまえば排出は難しいそうです。

先日の報道でも、地面からの舞い上がりによる内部ひばくの影響は大きいという研究結果が示されています。

横浜市の0.59という基準は、先日来、高すぎると訴えてきましたが、
基準設定の考え方が理屈にあわない、という以上に、この高い基準設定により、
危険な【マイクロスポット】が見過ごされてしまうという、大変な実害をもたらしていると言わなければなりません。

私たちの町なかの、そこここに小さな「強制避難区域」が出現してしまっている。
この厳しい現実から目をそらすわけにはいきません。
今の都合より、未来のために、勇気を出してこの放射能汚染に立ち向かわなければいけないのだと思います。

【マイクロスポット】をできるだけあぶり出すためにも、基準値を引き下げる事、子ども達が過ごす学校、保育園・幼稚園、公園、通学路などで【マイクロスポット】の危険がある所をまずは立ち入らないよう注意喚起する事、そしてやっつけ仕事ではなく本格的な除染を横浜市でも早急に行うよう市長に求めていきます。