来月2月から再開される給食への牛肉提供を前に、牛肉全体の放射能検査や給食用の「浜ビーフ」の調査のため、保護者の皆さんと一緒に「横浜食肉市場」を視察してきました。
鶴見区の大黒町にある「横浜食肉市場」。
ここで牛・豚など食肉の解体(と畜)、検査、流通が行われています。
2011年4月から6月には、原発事故により放射能汚染された牛肉が全国に出回り、ここ(畜場名:横浜市中央と畜場)から流通した牛肉にも最大1,400Bq/kgもの放射性セシウムが含まれていました。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/syoku-anzen/1-2/gyukensa.html
さらに、学校給食でもそうした汚染牛肉が提供され、市内127校の子どもたちに食べさせてしまったという、痛恨の経験をしたのです。
http://d.hatena.ne.jp/sakuraline/20110805/1312562937
「市場に流通している食品は全て安全だから改めて検査する必要は無い」としてきた横浜市の方針が間違っていたことが明らかになり、給食の安全を求める市民の声がようやく聞き入れられ、今日の給食全食材検査や市場での食品検査などの対策が始まる大きなきっかけとなりました。
それから3年近くが経ち、これらの汚染対策が各方面で見直されようとしています。
その一つが、給食への牛肉の提供再開です。
今日視察したポイントは2つ。
1、2011年8月から行っている「牛肉の全頭検査」ってどう?
2、学校給食用の「浜ビーフ」の安全対策とは?
まずは、「牛肉の全頭検査」を行っている検査室を見学。
その日に入荷した牛全頭それぞれの首の部分1.2kgをこの検査室に持ち込み、挽肉状態に加工し、1頭分ずつ「ゲルマニウム半導体検出器」にかけます。
この検出器、一台なんと1,700万円なり。
高性能です。
とは言え、数ベクレルの放射性セシウムを検出するには1回あたり少なくとも30分はかけておく必要ありなのですが、
一日平均60頭もの牛を「全頭」検査するには時間が足りないとのことで、
1頭あたり3分で検査。
流れ作業です。
そのため、検出下限値は25Bq/kg。
それ以下は全て「ND」不検出、とされます。
( プロ野球選手に草野球をさせているような・・・モッタイナイ)
ともあれ、このような「全頭検査」の結果、これまでの牛肉は全て「不検出」となっています。
今日の入荷は55頭だったため、ほぼ午前中でゲルマ検査器の出番は終了。
午後は稼働していません。
( 高給取りに半日遊ばせているような・・・モッタイナイ)
保護者「これならこんな立派な検査器で無くても良いのでは?」
担当者「以前使っていたシンチレーション式では100Bqの新基準に対応できなくなったので」
井上 「検査器があいている時間に、1日1頭でも精密な検査をしては?」
担当者「器械はあいていても職員があいていないので」
参加者一同各種の疑問を抱きながらも、次の「浜ビーフ」についての説明を受けるため、会議室へ移動。
こちらで新たに横浜食肉市場発のブランドとする「浜ビーフ」について聞きました。
まず「浜ビーフ」についての説明は以下の記者発表資料の説明通り。
http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201311/images/phpacX3LR.pdf
この考え方で北海道と青森、2つの生産者から集荷する若いホルスタインを「浜ビーフ」と認定したとのこと。
ポスターも貼ってありました。
保護者「飼育管理の確認とは?」
担当者「チェック表に基づき確認」
井上 「これで望ましくない結果が出た場合どうするか?」
担当者「そういう事がないようにする」
保護者「そこがダメなら他の業者ということは考えているか?」
担当者「安定供給を考えてこの2社にしたので(変更は難しい)」
井上 「何社に対してこのチェック表で確認して、比較したのか?」
担当者「ちょっと分からない」
井上 「最初から2社で検討と聞いたが?」
担当者「そうかもしれない」
保護者「餌の産地や放射能検査の有無などは確認しているか?」
担当者「それは確認していない」
井上 「品質を担保するための契約は?」
担当者「商習慣として文書による契約はなく口約束」
井上 「「浜ビーフ」と認定した2社の名前は?」
担当者「それは公表できない」
保護者「横浜市の給食検査は良くやってくれている。牛肉再開も理解するが、せっかくなら市民が納得できるやり方をして欲しい」
担当者(もごもご・・・)
食品偽装やニセブランドが問題になっていますが、
この「横浜ビーフ」という看板、ブランドと呼ぶことさえ難しいと正直思いました。
汚染牛肉問題を重い教訓として、給食の安全対策を他の自治体に先駆けて行ってきたはずの横浜市。
忙しい業務のあいまに視察に応じて頂いた職員の皆さんには感謝しつつも、
今日のところはちょっと残念な点も多かったため、牛肉の給食への提供再開にあたり以下のような取り組みを行うよう市に求めていきます。
【 市場全体の牛肉検査について 】
検出下限値が他の食材に比べて25ベクレルと高くなっている現在のスクリーニングに加え、豚肉等と同様1ベクレル程度まで分かる精密検査を少量でも行うこと。
【 学校給食に使う「浜ビーフ」について 】
①牛に与える飼料の産地など安全性を担保するための要件を設けること。
②文書による契約や代替可能な生産者の開拓など、質を確保するための透明性と競争性を追求すること。
②精密検査をして結果を公表すること。
3年という節目を前にして、原発事故直後のような食品に対する不安は無くなっているかもしれませんが、
放射能汚染はそう簡単に無くなるわけではありません。
特に子ども達には放射能に汚染された物を食べさせない、という約束はこれからも変わることがあってはならないと思います。
皆様も是非、ご注目をお願い致します。